新冷血と読書
高村薫さんの連載「新冷血」、またも視点は中学生のアユミちゃんです。なぜかこの家族、朝の風景しか描かれません。何か意味があるんでしょうか。いずれ連載が続いていけばふとした拍子に朝の風景と結びつくことがあるかもしれません。
ところで、アユミちゃんちは歯医者さんなんですが、まさかそこへ親不知の痛みが我慢できなくなってトダが来るとかそんな無茶な展開はないですよねえ?痛みを我慢できなくなったトダが医院を訪れる→ここはいいカモかも、とイノウエが目をつける→深夜に痛みが我慢できなくなったとかなんとか言って玄関を開けさせる・・・まさかねえ・・・・・。
そういえば、私、詰め物が取れてむき出しになった虫歯と、新しい虫歯とあって歯医者に行きたいのでした。
さて。歯医者に行く時間もなく、毎日寝る時間もまとまって取れず、なかなかハードな生活をしていて、読書もままならないわけですが。
そんな中、最もやってはいけないことをやってしまった。
ただ単に作者が「祐介」だったから。それだけの理由で。レディ・ジョーカーよりも分厚い、凶器になりそうな本、上下巻を図書館で借りて、2日で読破してしもうた・・・。眠い。それだけ没頭してしまったのは貴志祐介「新世界より」。
おもしろいという評判は知っていました。没頭してしまうから有給取って読むべし、との噂も。
まさか本当にこれほど没頭するなんてorz 自分のバカバカバカ。
文章は、非常に癖があります。知識をひけらかすような、独特のいやらしさもあります。やたらと「このときはまだ知らなかった」的なもったいぶりがあり「ええい、鬱陶しい、結論を述べよ!!!」とキレそうにもなります。千年後の日本、人間がみなPK(超能力)を持っている、というありがちな感じの設定、ハリポタもちょっとまねてみました的な呪力の描写、現代の世相も取り入れてみました的エッセンスのふんだんなちりばめかた。もったいぶった伏線はきっちり回収されますが、読者が「おお!」と気づくのでなく、そりゃご丁寧に文中にフォントまで変えた解説が(笑)。主人公は都合よく頭が回るしなんだかんだで英雄気質、いいとこどり。
・・・・・・自分が勝手に没頭して寝る時間削ったくせにこきおろしてますな(苦笑)。
悔しいけど、没頭したんだよ、はまりにはまって読み耽ったのさーーー。祐介はすごいや(開き直った)。何がうまいって、続きが気になってとまらなくなる勢いが途中で途切れないこと。ずーっとハイペースで物語りは進む。そのペースに読者はまんまと乗ってしまうんですな。そして読み進むとだんだん独特のいやらしい文章にかえってニヤリとしてしまうなんとも倒錯した喜びが。
先に書いたとおり、1000年後の日本が舞台、人間は呪力を持ち、神のように振舞っている世界での物語。ただし、神のように、とは言っても実はあれこれと規制があり、呪力は人間に対しては使えないとか、こどものうちは発揮できないとかあります。また、万能ではなく、呪力も人によって得手不得手がある。
主人公、当初は12歳。思春期になって呪力を使えるようになり、呪力を伸ばすための学校へ進級します。そこで夏のキャンプに行き、学校では教わらない人類の歴史、血と争いにまみれた歴史を知ります。
呪力を自分で制御できない人は「処分」されるなど、徹底的に管理された閉鎖的な町。
同級生が「処分」されるかもしれない、その危機に際して、主人公は自分こそが町の統率者となると知らされます。
そして大人になった頃。
そこで、まるで人間の奴隷のように扱われてきたバケネズミという生き物が兵を組織し、人間に反乱を起こす。猛然と立ち向かう主人公。争いなど無縁の平和な町で平和に暮らしてきた割に機転の利く主人公のおかげで人間側が勝利します(←まだこきおろしたりないのか!)。
人間とはなんぞや。
そんな大きな主題があるようですが、それは考えなくても良い気がします。単純に、SFとして楽しめばいいような。
「祐介」さんに興味湧いた方、2日ほど休みがあればぜひチャレンジしてみてください。
分厚い上下巻ですが、文字数はLJよりずっと少なく、かなり読みやすいので時間はそんなにかかりません。
面白いです。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント